PBR1倍の意味
日経平均株価が3万円を超えて、連日高値で株式の売買が行われています。
日本の株高は、海外投資家の日本買いが原因といわれますが、東証(東京証券取引所)がPBR(株価純資産倍率)1倍を下回る上場企業に対して、株価水準を引き上げるための具体策を要請したことも背景にあるのでしょう。
PBRは、投資家が株式を売買する際の株価が割高か、割安かを判断するための代表的な指標であり、株価がその企業の1株あたり純資産の額の何倍であるかを表しています。
企業の1株あたり純資産の額は、企業が解散する場合の株主分配原資を示す値であることから、PBRが1倍を下回ることは、企業の株価が解散価値よりも低いことを意味します。
日本の株式市場は、欧米に比べるとPBR1倍未満の上場企業の数が多く、これまで長い間改善されずにきました。
原因の1つには、日本の企業が長い間デフレに苦しむ中で、将来の利益成長に不可欠な付加価値を生み出す力を落としていったことがあるでしょう。
世の中に優れた製品やサービスを売り出すことで利益を増やしていける企業は、将来の利益成長が期待できるので、株価が高くなり、PBRは上昇します。
反対に、世の中に優れた製品やサービスを売り出すことができない企業は、将来の利益成長が期待できずに、株価とPBRが低迷することになります。
また、日本の上場企業のPBRが低迷する理由には、日本では大胆な企業再編や産業の新陳代謝が起きず、国全体が低収益に甘んじていたことがあります。
企業が将来の利益を増やすためには、自社の競争力を高めるための設備や人への投資が必要です。
しかし、それらはずっと先送りされ、将来の投資余力として内部留保のかたちで企業内に積み上げられてきました。
今回の東証の要請は、株式取引所としては世界的にも異例の取り組みで、低迷する株価をテコ入れする狙いがあるといわれています。
PBRを高めるには、企業が付加価値を生み出す力を高めていくことが第一です。
そのためには、未来を予測して戦略的に設備や人への投資を継続し、競争力のある製品やサービスの研究開発を重ねていかなければなりません。
また、低収益性の事業を見直し、場合によっては事業を手放す決断も必要になるでしょう。
もちろん、余剰の純資産が積み上がっているのであれば、増配や自社株買いのかたちで株主に還元する方法も一時的なPBR改善策となります。
PBR1倍割れは、株式市場から上場失格という評価を与えられていると捉えることもできます。
PBR1倍という数値の意味を、企業が株式を上場させる意義と株主が上場株式に投資する意義の均等する点として考えれば、上場企業の将来の利益成長に対する決意の有無が垣間見えるような気がします。