財政コントロール
日銀は、7月の金融政策決定会合で10年物国債の利回りに1%までの上昇余地を与え、イールドカーブ・コントロール(YCC)を柔軟化しました。
植田総裁は、今回の決定は金融緩和の持続性を高めるための措置と説明しましたが、専門家の中には金融正常化の始まりと理解する人もいます。
日銀がマイナス金利政策を終了すれば、日米間の金利差が縮小して為替相場は一時的に円高方向へ進むでしょう。
また、日本国債の利回りが上昇すれば、今まで米国債などに投資していた投資家は、より多くの資金を国債に振り向けることになります。
しかし、日本国債の発行残高は既に1,000兆円を超え、その過半は日銀が保有しています。
財務省によれば、金利が1%上昇すると、3年後の国債費(利払い費)は3.7兆円増加するそうです。
令和5年度予算は、一般会計の総額が過去最大の114兆円となり、このうち過去に発行した国債の償還や利払いにあてる国債費は、9111億円増えて25兆2503億円となりました。
歳入全体に占める国債の割合は31.1%と依然として国債頼みの状況が続いています。
日本の財政に対する信認が低下すると、投資家は日本国債の保有に高い金利を要求するようになり、財政状況は一段と苦しくなります。
国債を自由に発行できなければ、不況期の経済対策や国防・少子化などの新しい政策ニーズへの支出が制限されることにもなります。
国は金利がある世の中に備えて、財政のコントロールを計画的に進めていかなければなりません。