円安相場の揺り戻し
先週の東京外国為替市場では、米国の早期利下げ観測を受けて急速な円高ドル安が進み、円相場は一時1ドル140円台後半まで値上がりしました。
金融市場では、日銀がマイナス金利やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を早期解除する可能性は低いと見ていますが、今週の植田日銀総裁の発言次第では、更なる円高相場の突入も懸念されます。
米国では新型コロナ禍以降、物価の上昇と共に景気が加熱していく状況が続いたため、FRB(連邦準備制度理事会)は金融の引き締めを行い、米国の長期金利は一貫して上昇していきました。
一方、日本でも新型コロナ禍以降はエネルギーや食糧品を中心に価格の上昇が見られましたが、日銀の金融緩和政策によって日本の長期金利は抑えられ、日米の金利差が大きく拡大していきました。
その間、外国為替市場では、金利の低い円を売って金利の高いドルを買う動きが強まり、円相場は一方的に円安の方向に動いていました。
しかし、先週、FRBのパウエル議長がFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見で、今後の追加利上げの可能性は排除しないものの、利上げはもはや基本シナリオではないとコメントすると、市場には来年以降の利下げを織り込む動きが一気に広がりました。
為替相場は、各国の景気や貿易収支などのファンダメンタルズのほか、株価や金利、物価の動向、政府要人の発言など、様々な要因が絡み合い、まるで生き物のように動きます。
今回の円安相場の揺り戻しが、どの程度まで戻るのかは分かりませんが、しばらくの間は円相場の動きから目が離せない状況が続きそうです。