待ったなしの財政健全化
日本の低金利に起因する円安が続いています。
先週26日のニューヨーク外国為替市場では、円相場が34年ぶりの安値となる1ドル158円台に急落しました。
日銀が政策の現状維持を決めたことで、かりに為替介入が実施されたとしても、その効果は短期にとどまるとの見方がマーケットにあります。
一方、長期の円安は、輸入物価の上昇を通じて、日本経済のインフレ圧力を強めることになります。
海外から商品や原材料を輸入する企業では、円安による負担増を価格に上乗せしなければ生きてはいけません。
しかし、そうした企業の行動が、国民の消費マインドを減退させる恐れがあり、経営者からは円安の長期化を不安視する声が出始めました。
円安が海外事業の収益を押し上げている企業でも、過度の円安は日本人社員の給与水準の低下を招くという声や、インバウンド需要に沸く企業でも、価格の上昇に日本人客が追いついていけないと心配の声が出ています。
いまや、賃金と物価の好循環ではなく、円安とインフレの悪循環が気がかりです。
多くの専門家は、日銀による利上げが最も有効な円安対策になると考えています。
しかし、11年に及ぶ質的・量的緩和のツケは大きく、利上げに伴う国債利払い費の増加や日銀の財務悪化など、強い副作用が懸念されます。
日銀の急激な政策転換は現実的とはいえず、利上げに備えた財政の健全化は待ったなしといえます。