定額減税と給付金
6月に1人あたり4万円の税負担を減らす定額減税がスタートします。
企業からは実務の詳細が明らかになるにつれて、作業内容が複雑すぎるとして業務のミスを心配する声が上がっています。
岸田首相は、定額減税による還元は、コロナ禍に国民が納めた所得税と住民税の税収増の3.5兆円分を、物価高に苦しむ国民に税の形で分かりやすく返すという趣旨で実施するものだと説明しました。
国民にお金を還元する方法のうち、減税と給付のどちらが政策効果として有効かについては様々な意見があります。
とはいえ、手続きの簡便さや効果を迅速に国民に行き渡らせるという点では、減税よりも給付のほうが優れているといえます。
特に、コロナ禍での給付金の支給遅延という失敗から、マイナンバー制度の普及に力を入れてきた政府としては、マイナンバーと紐付けた公金受取口座の活用は十分検討できたはずです。
にもかかわらず、企業や地方自治体に一度限りの複雑な実務負担を強いるという、定額減税を決めた政府の政策決定は大いに疑問です。
今回こそ、まさに全国民に対してマイナンバー制度の普及を大きく進める絶好のチャンスであり、政府や地方自治体にとっても、全国民に迅速に給付金の支給ができるかどうか、チャレンジするチャンスがあったのです。
一度限りになるかもしれない定額減税の実施は、非効率な行政の代表例といえるでしょう。