所得再分配の強化
103万円の壁の見直しには減税財源の確保を含む税制改正が必要となります。
これから年末にかけて、自民、公明、国民民主の3党が議論を本格化させますが、その際に参考となるのが、平成30年度の所得税法の改正かもしれません。
平成30年度税制改正では、個人の働き方の多様化を踏まえつつ、働き方改革を後押しするなどの観点から、所得税法の一部を見直しました。
その内容は、給与所得者と年金受給者に適用される給与所得控除と公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げるとともに、すべての所得者に適用される基礎控除の控除額を10万円引き上げるというものでした。
また、同時に、これまで所得の多寡に関係なく一律に適用していた基礎控除の控除額を見直して、合計所得金額2,400万円超の高所得者から基礎控除額を逓減させて、合計所得金額2,500万円超の高所得者の基礎控除額をゼロとしました。
これにより、給与所得者と年金受給者(それぞれ高所得者を除く)の税負担が変わらずに、それ以外の所得を得ている個人事業者など(高所得者を除く)の税負担が軽くなる一方で、一定の高所得者の税負担が重くなって、所得の再分配が強化されました。
国民が租税を広く公平に分かち合うためには、公平・中立・簡素の3原則が重要です。
なかでも、近年は世代間の租税負担の公平が心配されています。
同世代間の租税負担の公平には、経済力が同等の人に等しい負担を求めるという水平的公平と、経済力のある人により大きな負担を求めるという垂直的公平の2つの公平があります。
103万円の壁の見直しは、経済力のない人に等しく少ない負担を求めるという議論です。
そうであれば、経済力のある人にはより大きな負担を求めてしかるべきという議論に行きついても不思議ではありません。
今後、減税財源を探す議論が本格化しますが、国債発行による将来世代の負担とせずに、現世代の負担によって問題の解決ができることを望みます。