実需と仮需
暗号資産1ビットコインの価格が、初めて10万ドル(約1500万円)の大台を超えました。
米国の上場投資信託(ETF)解禁後のビットコイン市場の拡大や、トランプ次期大統領による規制緩和への期待から、ビットコイン価格の上昇に弾みがついた模様です。
公正な市場で売買されるモノの価格は、市場におけるモノの需要とモノの供給のチカラ関係により決まります。
市場でモノの需要(買い)がモノの供給(売り)を上回れば売買される価格が上がり、反対にモノの供給(売り)がモノの需要(買い)を上回れば売買される価格が下がります。
市場は常時、モノの需要(買い)とモノの供給(売り)を計測して、時々のチカラ関係に応じて売買される価格を決定します。
FRB (米国連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、現在、ビットコインが仮想通貨(決済手段や価値保蔵手段)として殆ど利用されていない理由は、ビットコインの価格のボラティリティが高すぎて、ビットコインが信頼できる通貨として利用できない点を指摘していました。
市場におけるモノの需要(買い)には、大きく分けて実需と仮需の2種類があります。
実需は、実際にモノを利用するためにモノを買う需要です。
実需の背後には必ずと言って、モノを買った後にモノを利用する目的・理由が存在します。
一方、仮需は、モノの価格の変動によって利益を得るためにモノを買う需要です。
仮需は、極端に言えば、利益が得られそうなモノであれば対象となるモノは何でもよく、モノを買った後には必ず利益を得るためにモノを売る(供給)という行動が控えています。
ビットコインの価格の推移をみると、パウエル議長の指摘のように、ビットコインに対する需要(買い)には、実需よりも仮需のほうが大きいように感じます。
モノに対する仮需が大きい場合、注意すべきは需要の脆さです。
仮需は、市場で売買されるモノの価格が急落したときに、一気にモノの供給(売り)へと転じる性質があります。
モノの価格形成が仮需によるものであればあるほど、価格下落時には供給(売り)が供給(売り)を呼ぶ展開へと繋がりやすくなります。
ビットコインをこれから買う会社や、すでにビットコインを保有している会社は、現在のビットコインの価格形成が主として実需によるものなのか、それとも仮需によるものなのか、注意深く見極めてから慎重に行動する必要があります。