コストから投資へ

年金制度改正法案が衆議院で可決され、いまの国会で成立する見通しです。

この法案には、企業で働く短時間労働者の社会保険の加入要件を緩和する措置が含まれています。

これまでは短時間労働者が社会保険に加入するには、以下の4つの要件をすべて満たす必要がありました。

(1)所定内賃金が月額8.8万円以上であること。

(2)週の所定労働時間が20時間以上であること。

(3)学生でないこと。

(4)被保険者数51人以上の企業で勤務していること。

それが今回の改正によって(1)の賃金要件が撤廃され、(4)の企業規模要件は令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的に廃止されることになりました。

短時間労働者の社会保険料は企業と労働者が半分ずつ負担します。

そのため、今回の改正は企業の人的コストを増加させることになります。

近年、企業の人的コストは、少子化による労働人口の減少や物価上昇に伴なう最低賃金の引き上げによって年々増加しています。

当面、こうした流れが続くことを考えると、企業は人を雇うことを、機械や設備と同じように仕事を処理するために必要な経営資源という意識から、将来の成長や競争力を生み出すために必要な経営資源という意識に大きく転換していく必要があります。

人にしかできない新しい付加価値を生み出す創造力や、有益なコミュニケーションを通じて他者と協働する力は、企業の持続的な成長や激しい競争に打ち勝つために欠かせない資産となります。

企業は何のために人を雇うのか。

人材を企業価値を維持するためのコストから、企業価値を高めるための投資と捉える意識に転換しなければ、今後も増え続ける人的費用に対して、企業の経営は苦しくなるばかりです。

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