従業員の賃上げや雇用を増やしたときの税制
令和3年度の税制改正で、従業員の賃上げや雇用を増やしたときの税制が、以前よりも使いやすくなりました。
人への投資を積極的におこなう会社は、この税制の活用漏れがないように注意しましょう。
2つの税制
中小企業が、従業員の賃上げや雇用を増やしたときに使える税制は、2つあります。
1つは、所得拡大促進税制です。
この税制は、当期に支給した従業員給与(賞与含む)が、前期よりも1.5%以上増えている場合に適用することができます。
具体的には、増加した従業員給与(賞与含む)の15%分を、当期の法人税から差し引くもので、従業員給与(賞与含む)を増やせば、その15%分の節税ができるという内容です。(ただし、法人税の20%が上限)
実際の税務申告では細かいチェックが必要ですが、決算書の従業員給与(賞与含む)を2年分比較すれば、適用の可否と概算の節税額がわかるでしょう。
もう1つの税制は、人材確保等促進税制です。
この税制は、当期に支給した入社後1年以内の従業員給与(賞与含む)が、前期に支給した入社後1年以内の従業員給与(賞与含む)よりも2%以上増えている場合に適用することができます。
具体的には、当期に支給した入社後1年以内の従業員給与(賞与含む)の15%分を、当期の法人税から差し引くもので、新規採用を増やせば、その分、節税ができるという内容です。(ただし、法人税の20%が上限)
節税額が、当期に支給した入社後1年以内の従業員給与(賞与含む)の15%分なので、大きな金額になることも十分ありえます。
選択適用
所得拡大促進税制と人材確保等促進税制は、令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度で適用することができます。
ただし、2つの制度を併用することはできません。
したがって、税務申告をおこなう前に、所得拡大促進税制と人材確保等促進税制のそれぞれの節税額を計算して、金額の大きい方を活用することになります。
その場合に、国等から雇用調整助成金等の給付を受けているときは、計算がすこし複雑になるので注意が必要です。
また、人材確保等促進税制では、入社後1年以内の従業員を特定して、その者に支給した給与(賞与含む)を合計するといった作業が必要になります。
それぞれの制度で計算方法に違いがあるため、最初は細かい部分までしっかりとチェックして、計算誤りのないようにしましょう。
まとめ
令和3年度の税制改正で、従業員の賃上げや雇用を増やしたときの税制が、以前よりも使いやすくなりました。
人への投資を積極的におこなう会社は、この税制の活用漏れがないように注意しましょう。