令和4年度税制改正による消費税の落とし穴
売上高が1000万円未満の消費税の免税事業者は、消費税インボイス制度が始まると、商品・サービスの販売をしても相手から消費税を受け取ることができません。
このことは、免税事業者の取引相手からすると、支払が不要な消費税部分の価格を引き下げるように要求することにつながります。
消費税インボイス制度は、免税事業者には大きな影響があるので、インボイス発行事業者の登録をするかどうかは、慎重に判断する必要があります。
令和4年度税制改正では、インボイス発行事業者の登録時の経過措置が6年間延長され、免税事業者にとっては期中登録の自由度は大きくなりました。
ただし、免税事業者がインボイス発行事業者の登録をしたあと再び免税事業者に戻ろうとするときは、登録日の違いによって大きな差がでるので注意が必要です。
消費税のインボイス制度
改正前の消費税インボイス制度では、消費税の免税事業者は、制度開始時の令和5年10月1日を含む課税期間を除き、期中にインボイス発行事業者の登録はできませんでした。
このため、令和5年10月1日を含む課税期間を過ぎてしまうと、免税事業者は、インボイス発行事業者となる課税期間の初日の前日までに、まずは消費税課税事業者選択届出書を提出する必要がありました。
今回の改正では、従来のインボイス制度開始時の経過措置を6年延長して、免税事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日を含む課税期間までは、事前の課税事業者選択届出書の提出がなくても、期中にインボイス発行事業者の登録ができるようになります。
登録日の違いによる2年縛り適用の違い
免税事業者が、令和5年10月1日を含む課税期間にインボイス発行事業者の登録をした場合は、インボイス発行事業者の登録を取り消す旨の届出書を、登録を取り消す課税期間の初日の前日までに提出すれば、元の免税事業者に戻ることができます。
これは、消費税インボイス制度開始時の特例として、免税事業者が令和5年10月1日を含む課税期間にインボイス発行事業者となる場合には、本来必要な消費税課税事業者選択届出書の提出を不要とする経過措置が認められているためです。
ただし、免税事業者が課税事業者になったあと2年間は元の免税事業者に戻れないという2年縛りの適用免除は、経過措置を延長する今回改正後も引き続き、令和5年10月1日を含む課税期間だけです。
ですから、消費税インボイス制度の開始後に、免税事業者が、一度はインボイス発行事業者となるものの、状況次第では元の免税事業者に戻ることを考えている場合には、令和5年10月1日を含む課税期間にインボイス発行事業者の登録をすることをお勧めします。
もしも、それ以外の課税期間にインボイス発行事業者の登録をした場合は、原則どおり、2年間は免税事業者に戻ることができません。
今回の改正でも、この部分に変更はないので注意が必要です。
まとめ
令和4年度税制改正では、インボイス発行事業者の登録時の経過措置が6年間延長され、免税事業者にとっては期中登録の自由度は大きくなりました。
ただし、免税事業者がインボイス発行事業者の登録をしたあと再び免税事業者に戻ろうとするときは、登録日の違いによって大きな差がでるので注意が必要です。