海外進出とカントリーリスク
連日報道される、ロシアのウクライナ侵攻は、歴史や思想の異なる国でのビジネスの難しさを痛感させる出来事です。
最近は、イギリスやアメリカなどの先進国でも、ビジネスに影響するような政策転換(ブレグジットやトランプ政権)が起こることがあり、海外ビジネスのリスクを意識することが増えています。
海外ビジネスのパターン
日本企業が行なう海外ビジネスには、大きく2つのパターンがあるといわれています。
1つは、商品・サービスの販路拡大のために海外進出するパターン、もう1つは、商品・製品のコスト引き下げのために海外に進出するパターンです。
少子高齢化が進む日本では、販売市場は年々縮小していきます。
ですから、企業が人口の多い国に進出して、販売市場を開拓するのは自然な流れといえます。
また、企業がコストの引き下げに注力する背景には、インターネットの普及があります。
消費者がインターネットで安くて良いモノを常に求めるようになると、企業は、少しでも安くて良いモノを作るために、良質で安価な人や原材料を求めて、海外に出ていかざるをえなくなります。
経営資源と国選び
販路の拡大にしろ、コストの引き下げにしろ、海外でビジネスを行なう上で最も大事なのが国選びです。
当たり前ですが、海外では言葉に始まり、政治や経済、法律の仕組み、人びとの考え方や文化、習慣など、それぞれの国で皆違います。
当然、ビジネスで成功するためのノウハウも異なります。
ですが、多くの国の中から、自社のビジネスに適合する国を選ばねばなりません。
おそらく、経営資源の少ない中小企業では、一度に複数の国でビジネスをするのは難しいでしょう。
どこか1つの国を選んで、その国に経営資源を集中投入するのが現実的です。
進出する国選びには、十分に時間をかけて、社内だけでなく、専門家や海外進出済みの企業の意見も検討のうえ、慎重に決定していくことが重要です。
万一の備え
1つの国への経営資源の集中は、事業の成功を高めることと引き換えに、その国に何かが起きた際のリスクを全部かぶることを意味します。
カントリーリスクとは、その国で起こる、政治や経済、社会状況の変化、事故や災害などによる損失発生や資金回収不能などのリスクです。
このリスクは、一企業が事前に準備しておくことは難しく、一旦発生すると否応なく影響を受けるものです。
最悪な場合は、事業の撤退につながる可能性もあります。
カントリーリスクは、海外に進出した時点で避けることができません。
会社には、万一に備えて、財務体力を常時十分に確保しておくことが求められます。