為替ヘッジの活用

円ドル相場が大きく変動しています。

7月29日は一時1ドル132円台をつけて、3月半ばの115円から139円まで進んだ円安が、たった1週間で一気に6円も逆戻りしました。

原材料や商品・製品を外国と取引する企業は、円建て取引以外では、輸出入代金の為替の変動に直面します。

7月1日の決算会見では、ニトリホールディングスの似鳥会長が、業績未達は為替の予想が外れたことが一番大きく、せめて期末まで為替予約すべきだったといい、為替変動が企業業績に与える影響の大きさを示しました。

為替ヘッジ

為替ヘッジとは、外貨建ての輸出入代金の円換算額が、為替の変動によって変化するのを避けるための取引です。

たとえば、商品の輸入代金を取引3ヶ月後に支払う場合に、取引時点で1ドル110円の為替が、3か月後に1ドル100円ならば、企業は1ドルにつき10円安く仕入れることができ、逆に1ドル120円ならば、10円高く仕入れることになります。

企業が何も手を打たなければ、このように円の仕入代金は実際に支払うまで決まりません。

ただ、それでは困るので、企業は取引から3ヶ月後の為替の変動を避けるために、為替ヘッジをおこないます。

為替ヘッジの種類には、為替予約や通貨オプション、外貨預金や外貨借入などがあります。

為替予約

為替予約は、あらかじめ通貨・為替レート・受渡日・金額を決めて、銀行と外貨購入や外貨売却を約束する取引です。

商品の輸入代金を取引3ヶ月後に支払う場合に、取引時点で銀行と1ドル110円の為替予約をしておけば、為替が3か月後に1ドル120円になっても、企業は1ドル110円で商品を仕入れることができます。

為替予約のおかげで、10円得するわけです。

では、3か月後に1ドル100円になったら、どうでしょうか。

そのときは、逆に、為替予約のせいで10円損することになります。

為替予約は、将来の為替を決めるのが利点ですが、かならず取引しなければならないので、相場によっては、為替予約しない方がよかった、ということがあり得ます。

通貨オプション

為替予約の欠点をカバーするものとして、通貨オプションがあります。

通貨オプションは、銀行と、あらかじめ決めた条件で外貨を購入する権利や外貨を売却する権利を売買する取引です。

商品の輸入代金を取引3ヶ月後に支払う場合に、取引時点で銀行から3ヶ月後に1ドル110円でドルを購入する権利を買っておくと、3ヶ月後の為替が1ドル120円のときは通貨オプションを行使して110円で仕入れ、1ドル100円のときは通貨オプションを放棄して100円で仕入れることができます。

通貨オプションは、為替予約と違って、権利を放棄することで、将来の為替の変動の損失を抑えつつ、利益が享受できるので、とても有効な為替ヘッジです。

外貨預金、外貨借入

為替予約や通貨オプションは、為替の変動を避ける取引として有効ですが、代金の入金や支払いの都度、外貨ごとに、いつ、いくら取引するのか、正確に管理して実施しなければなりません。

そのため、実務が面倒で、実際に中小企業で、為替予約や通貨オプションに取り組むのは難しいかもしれません。

その場合は、外貨預金や外貨借入の活用がお勧めです。

たとえば、一年を通じて商品の輸入代金を何度も支払う場合には、事前にまとめて1ドル110円でドルを購入して銀行に預金しておき、そのドルを使って代金を支払えば、企業は、つねに1ドル110円で商品を仕入れることができます。

外貨預金は、為替予約や通貨スワップのような面倒な管理が不要で、まとめ買いや小分け買いが選べるので、中小企業にとって便利な為替ヘッジといえます。

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