金融危機の芽
9月に誕生した英国トラス政権は、公約していた、家庭や企業の光熱費支援策に半年間で600億ポンド(約9兆円)、所得税や法人税などの減税に450億ポンド(約7兆円)の経済対策を打ち出しました。
巨額の財政出動に対して、外国為替、株式、債券の三市場は、インフレ加速と財政悪化の懸念から、イギリス売りで反応しました。
イギリスでは物価が高騰していて、中央銀行がインフレを抑えるために何度も利上げをしています。
そこに今回、政府がインフレを煽るような大型減税を打ち出したことから、アクセルとブレーキを同時に踏む政策に、金融市場の不安があらわれました。
英国中央銀行は、通貨ポンドの急落を受けて英国債の金利が急騰したことから、急遽、市場での無制限の国債買入に踏み切りました。
今回のイギリス売りは、英国政府の政策の矛盾に金融市場が大きく反応した結果ですが、日本政府と日銀が実施している、ドル売り円買いの市場介入と異次元緩和の継続も、ブレーキとアクセルを同時に踏む政策です。
今のところ、円安の原因は日米金融政策の違いという意見が多く、市場関係者や専門家の多くが、日銀が異次元緩和を終了すれば、自然と円高方向に戻ると見ています。
しかし、2022年上期の日本の経常収支は、黒字額が前年比63%も減少していて、2014年以来、8年ぶりの低水準となりました。
海外からの利子や配当などの所得収支は増えていますが、輸入が輸出を上回る状況が続いていて、貿易収支の赤字は鮮明です。
日本は世界最大の純債権国ですが、GDP比の政府債務残高はG7中で断トツに高く、日本は信用リスクと無縁とは言えなくなりつつあります。
グローバルに繋がる金融市場のどこに危機の芽があるのか、各国の経済政策や金融政策、地政学上の問題など、日々の動きから目を離すことができません。