業務のデジタル化
国は、2023年10月に始まるインボイス制度や2024年1月から義務化される電子帳簿保存法をきっかけにして、中小企業の業務のデジタル化を推進したい考えです。
インボイス制度が始まると、日々の業務は増加します。
買い手(課税事業者)は、原則として、インボイス登録事業者(売り手)から交付されたインボイスを保存しなければ仕入税額控除が適用できないので、請求書や領収書の保存にはこれまで以上に注意する必要があります。
また、買い手(課税事業者)は、取引前には必ず、売り手がインボイス登録事業者かどうかを確かめておく必要があるので、手間が増えることになります。
一方、売り手(インボイス登録事業者)は、法定の記載事項の漏れや誤りがないようにインボイスを作成して控えを保存しなければならず、買い手が求めた場合には必ずインボイスを交付しなければなりません。
さらに、電子帳簿保存法の対応が義務化されると、電子取引で受け取った契約書や請求書を紙に印刷して保存することができなくなり、受け取った電子データは取引日や金額、取引先で検索できる状態で保存しなければならなくなります。
中小企業の業務には、契約書や請求書、領収書などの紙が多く存在します。
紙の場合、書類の回収や発送、回覧や綴じ込みなどでは、必ず人間の手が必要です。
しかし、デジタルデータであれば、それら人間の作業を省略することが可能です。
たとえば、紙で送っていた請求書をメールで送ることにすれば、印刷や封入といった作業がなくなります。
同様に、紙で受け取っていた請求書をメールで受け取ることにすれば、開封や回覧、綴じ込みの作業が不要です。
紙をデジタルデータに置き換えることで、人間の作業を減らして、業務効率を上げることができるのです。
ただし、業務のデジタル化には単純なものから複雑なものまで、いろいろな段階があります。
請求書の内容を会計ソフトに入力する業務を例にして考えてみます。
まず、紙で受け取った請求書を一枚一枚確認して、取引内容と金額を会計ソフトに入力した後、正しく入力してあることを確認する作業には手間と時間がかかります。
そこで、これを紙ではなくデジタルデータで受け取り、そのデータを会計ソフトに転記する、あるいはコピーアンドペーストすれば、少し作業効率が上がります。
しかし、転記やコピーアンドペーストといった人間の作業が残るので、デジタルの利点を活かし切っているとはいえません。
デジタルの利点は、間違いが生じにくい点です。
転記やコピーアンドペーストのような作業では、数字を間違って転記したり、内容を一部しかコピーアンドペーストしなかったり、ということが十分ありえます。
そこで、たとえば、最新のクラウドサービスを利用して、AI(人工知能)で請求書を読み取ったのち、会計ソフトに直接データを取り込むことにすれば、人間の作業がなくなり、業務の効率化と作業の正確さの両方を実現することができます。
数字を扱う業務は、デジタル化に最も向いている業務の一つです。
とはいえ、これまでの業務のやり方を変えたり、最新のクラウドサービスの利用方法を覚えたりする作業は大変です。
手間や時間の他にお金もかかります。
それでも、一度デジタル化をしてしまえば、会社のメリットが大きいことはハッキリしています。
業務のデジタル化は将来に向けた投資です。
インボイス制度や電子帳簿保存法の義務化は、従来の業務をデジタル化するチャンスになります。