人材の流動化
グーグルやアマゾン、メタなどの米国巨大IT企業が大規模な人員削減を行なっています。
各社は、新型コロナ禍での巣ごもり需要を背景にして事業の急成長を遂げてきました。
その間、事業を支える人材が足りなくなると、大量採用を実施して優秀な人材を集めるために高額な年収も提示していました。
しかし、対面での経済活動が回復するにつれてコロナ特需の反動が表面化していきます。
米国では急激なインフレと利上げによる景気後退が懸念されはじめ、広告予算を削減する動きが出てきました。
中長期では、個人情報を利用した広告規制が強化されて、ネット広告需要を減退させる恐れもあります。
大規模なリストラと聞くとネガティブに捉えがちです。
しかし、人材が流動化することで良い点もあります。
従業員は自分にあった働き方や希望する待遇を求めることができるようになり、企業は優秀な人材を豊富な労働市場から探し求めることができるようになります。
すると、従業員は仕事選びを会社任せにせずに、自分が本当にやりたい仕事について考え、行動していくようになります。
自ら進んで仕事に必要なスキルを身につけ、ステップアップするための勉強や経験を積み重ねることは、個人の能力向上と待遇改善に繋がっていきます。
企業は優秀人材が労働市場にいることで柔軟なキャリア採用が可能となり、従業員の能力や成果に基づいた処遇を実施できるようになります。
近年は事業環境の変化と革新的技術の普及、豊富な投資マネーの存在によって、倒産や合併、買収が増加し、企業の生存年数は短くなっています。
かたや、従業員は老後の2,000万円問題と人生100時代の到来によって、自分は何をして生きていきたいかという問いに真剣に向き合わねばならなくなっています。
人材が流動化していく時代は、従業員と企業の双方に自己変革努力を求めていくことになるのです。