予算の議論
防衛費増額に続き、異次元の少子化対策の財源をめぐる議論が活発です。
政府・与党には、増税よりも国民の反発が小さいことが予想される社会保険料の引き上げ案があるようです。
一方、子育て世帯を含む現役世代の負担増や、高齢化で膨らむ社会保障費を考慮すると、社会保険料の引き上げは現実的ではないという声も聞こえてきます。
先頃の防衛費の増額をめぐる議論では、財源を決めずに予算化するのは無責任だとして増税を求める意見と、現在の状況での増税は不適切だとして国債発行で手当てする意見が対立しました。
もっとも、国の財政では、個々の支出項目に個々の収入項目を対応させる必要はありません。
それでも、予算の編成では個々の支出項目間の優先度や効率性の十分な比較や検討がないために、予算の総額が膨れると、すぐさま財源の議論へと行きがちです。
政府・与党からは、財源を増税で賄うならば、選挙で国民に信を問う必要があるとの声があがりますが、増税するか、しないかの選挙では、増税の責任を国民に押し付ける手続きでしかありません。
国は、最終的に予算の財源を税収と国債発行によって手当てしますが、財源さえ見つかれば予算が承認されるというプロセスには問題があります。
このプロセスを企業の予算に置き換えてみると、資金さえ調達できれば、どんな事業でも行えることとなり、そのような企業はいつか倒産することになります。
国は、予算の編成において、各省庁から提出された個々の支出項目間の優先度や効率性について、十分な比較や検討を実施すべきです。
また、毎年の国債発行額をみて、歳出削減や財政再建を叫ぶのでは、問題解決は困難です。
国債の発行額や残高水準の是非については、中長期の観点での個々の支出項目の優先度や効率性の比較や検討、将来の税収見込みや国債の金利水準など、複数の合理的シミュレーションに基づく議論が不可欠です。
国は、将来の財政が予測不能な事態へと陥らないように、予算の議論を目の前のやりくりで終始する現在の状況から、一刻も早く変えていかなければいけません。