2割特例の活用

いよいよ本年10月1日に消費税のインボイス制度(商品・サービスの買手が仕入税額控除の適用を受けるには、原則として、売手であるインボイス発行事業者から交付されたインボイスの保存等が必要)が始まります。

すでに課税事業者の多くは、登録したインボイス番号を取引先に連絡したり、取引先のインボイス登録の状況を確認したりしています。

その際、取引先がまだインボイス登録をしていなかったり、今後も登録する予定がないという場合は、課税事業者が取引先にインボイス登録を要請したり、登録しない際の取引条件の見直しについて話をすることになります。

もちろん、独占禁止法や下請法があるので、取引先がインボイス登録をしないことを理由に、一方的な取引価格の引き下げや取引の中止ということはできません。

ですが、課税事業者としても、免税事業者からの仕入については仕入税額控除が制限されるため、何らかの見直しについては話をしないわけにもいきません。

国は、インボイス制度が事業者に与える影響を考慮して、制度開始時の経過措置として、一定期間の免税事業者からの仕入について仕入税額控除の特例を設けました。

具体的には、免税事業者からの仕入について、2023年10月1日から2026年9月30日までの3年間は従来の80%相当額、2026年10月1日から2029年9月30日までの3年間は従来の50%相当額の仕入税額控除を認めるというものです。

この特例によれば、課税事業者は、当初3年間は、免税事業者に支払う税込金額の110分の8(10×80%)は仕入税額控除を適用できることから、取引先の免税事業者には、残りの、税込金額の110分の2について、価格の見直しを求めていくことになります。

今般、国は令和5年度税制改正で、新たなインボイス制度開始時の特例(2割特例)を設けました。

その内容は、消費税の免税事業者がインボイス登録をしてインボイス発行事業者となった場合には、2023年10月1日から2026年9月30日の属する課税期間に納付すべき消費税は、課税売上にかかる消費税額の2割に軽減するというものです。

この特例によれば、免税事業者がインボイス登録をして消費税を申告する際は、取引先から受け取った税込金額の110分の2を納付すれば済むことになります。

もちろん、引き続き、免税事業者でいながら、取引先の課税事業者と前述の税込金額の110分の2の負担について話し合うという選択もあります。

しかし、取引先との難しい交渉に時間と労力を使わず、一度インボイス登録をしたのち、2割特例を利用する間に、インボイス登録を続けるか、それとも登録を取り止めて元の免税事業者に戻るのか、じっくり考えるという選択もあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

前の記事

外国人材

次の記事

アジャイル型組織への転換