年末調整の廃止
自民党の総裁選挙で河野太郎デジタル大臣が、年末調整を廃止して全納税者が確定申告するという考えを公約に掲げました。
これをうけて、民間の年末調整業務負担のあり方や正確な税務申告の確保と新たな国民負担の発生など、税のデジタル化と確定申告実務をめぐる議論が巻き起こりました。
日本は、社会全体にデジタル技術の利用が拡大する一方で、デジタル行政の共通インフラであるマイナンバーの活用が進まず、行政実務の効率化が進んでいません。
ますます深刻化する労働人口の減少に加えて、国と地方の財政健全化を実現するうえで、行政全体の抜本的効率化が、避けては通れない国民的な課題といえます。
もはや、あらゆる行政分野において、旧態然とした非効率なアナログ作業を温存する余裕はありません。
今後は、急発達している生成AI技術の導入を実現して、国民一人一人に対する行政サービスの提供に加えて、煩雑な行政文書の作成・管理の自動化、各種統計データの蓄積・分析、将来予測情報の生成・活用など、行政サービス、行政実務の両面において、大きな変革を遂げていくことが必要です。
もちろん、そのためには、データセキュリティの確保、新技術の複雑性の解消、技術基盤の安定性の確立、国と地方の行政手続きの共通化など、解決しなければならない課題がたくさんあります。
今回巻き起こった、税のデジタル化と確定申告実務をめぐる議論は、これからの行政全体のデジタル化を描く、ビッグピクチャーのごく一部にしか過ぎません。
今後も、各分野で事あるごとに、アナログ行政実務をデジタル技術によってどのように効率化していくのか、裾野を広げて議論していく必要があります。