アニマル・スピリッツ
企業家の野心的な意欲を表現する言葉に、アニマル・スピリッツがあります。
この言葉は、経済学者ケインズの著書、「雇用・利子および貨幣の一般理論」の中に登場します。
最近は、企業活動の原動力となる経営者のマインドを鼓舞する場面でよく使われています。
現在の日本企業を取り巻くビジネス環境は、人口減少による内需の縮小、デジタルテクノロジーがもたらす多様かつ急激な社会の変化、政治的対立がうむグローバル経済の分断など、非常に広範で複雑、かつ不透明です。
こうした現状に対して、ややもすると、中小企業は、未知のリスクを取ることを恐れ、他社との激しい競争や社内の衝突・軋轢を避けて、受け身な姿勢をとりがちです。
社員給与の賃上げプロセスを見ても、政府からの賃上げ要請、同業団体の賃上げ目標、他社の賃上げ水準に気を取られて、本来やるべき、社員との対話や賃上げ原資の確保といった課題に、十分な時間をかけた中小企業が、はたしてどのくらいあるのでしょうか。
中小企業のビジネスが、日本の社会の一部を構成する以上、どのようなカタチにせよ、世界と繋がり、世界の流れから離れて生きることはできません。
ビジネスは常に不確実です。
経営者である限り、不確実なビジネスの成功に向けて、チャレンジし続けていかなければなりません。
ケインズの著書、「雇用・利子および貨幣の一般理論」から、その一部を引用すれば、「投機による不安定性のほかにも、人間性の特質にもとづく不安定性・・・おのずと湧きあがる楽観に左右されるという事実に起因する不安定がある。・・・その決意のおそらく大部分は、「アニマル・スピリッツ」と呼ばれる不活動よりは活動に駆り立てる人間本来の衝動の結果として行われる行動であって、数量化された利益に数量化された確率を掛けた加重平均の結果として行われるものではない。・・・企業活動が将来利益の正確な計算にもとづくものでないのは、南極探検の場合と大差ない。こうして、もし血気が衰え、人間本来の楽観が萎えしぼんで、数学的期待に頼るほか、われわれに途がないとしたら、企業活動は色あせ、やがて死滅してしまうだろう」。
中小企業の経営者は、企業の活動の原動力が、自分自身のアニマル・スピリッツであることを忘れてはなりません。