環境とビジネスの両立
農産物の不作や漁獲量の減少、自然災害の多発など、気候変動の影響は深刻化しています。
企業には持続可能な社会の実現に向けて、環境への配慮が求められています。
たとえば、自社の使用エネルギーを化石燃料から太陽光発電に切り替えたり、CO₂排出量の見える化を進めたり、その活動は様々です。
一方、企業の環境活動には余分なコストがかかるため、そのスタンスは消極的となりがちです。
通常、企業が環境活動に取り組む理由には、次のものがあります。
・企業評価の向上
環境に配慮する企業には良いイメージがあるので、消費者からの支持獲得に繋がるほか、取引先からの評価も上昇します。
・ビジネス機会の創出
環境活動を通して異なる業種・業界と接触することで、新しいビジネスが生まれる可能性が高まります。
・企業認知度の向上
環境活動が新聞や雑誌などのメディアに取り上げられることで、自社が世の中から認知されるきっかけになります。
・優秀な人材確保
環境意識が高いといわれる若年世代からの就職希望者が多く集まることで、優秀な人材を採用することができます。
とはいえ、これらの理由はどれも副次的なメリットがあるだけで、自社の売上拡大にすぐに結びつくとはいえません。
そのため、環境活動と売上拡大を結びつけるには、もう少し別の取り組みが必要です。
近年増えている、モノの所有からサービスの利用へと消費行動を転換させるサブスクリプション・ビジネスは、その一例です。
他人とモノやサービスをシェアすることで、自分が必要な時に必要なだけ利用できるビジネスには、消費者が安価に利用できるという経済的なメリットだけでなく、自分が環境活動に参加しているという実感をもつことが可能です。
同様に、活発化する中古品売買では、売り手はモノを廃棄せずにお金を受け取り、買い手は必要なモノを安く買えるので、双方、経済的なメリットに加えて、モノを無駄にしていない実感があります。
今後、こうした変化は、製品の買替行動にも影響があるかもしれません。
大量生産・大量消費時代には、購入した製品が壊れると修理するよりも買い替えることが主流でした。
しかし、こうした行動は環境負荷が重く、今後は別の取り組みが必要になっていきます。
たとえば、メーカーが故障や部品の劣化を考慮して交換部品をあらかじめ用意しておけば、たとえ製品が壊れても部品を修理・交換して長く利用できるようになります。
消費者は安価なコストで長く製品を利用することができると同時に、廃棄物の削減に貢献することができます。
一方、メーカーは製品の販売だけではなく、部品交換やメンテナンス作業から利益を得ることができるので、顧客を囲い込むと同時に、同一製品から長期間利益を得るという新しいビジネスモデルが実現できます。
環境とビジネスの両立に成功すれば、企業は持続可能な社会の実現に貢献するだけでなく、自社の商品・サービスの売上拡大に繋げることが可能になります。