法人と個人事業の手取り額の違い
事業のやり方は、法人(株式会社や合同会社など)を設立しておこなう方法と、個人事業としておこなう方法の2つがあります。
どちらの方法が自分に適しているかは、両者の違いを理解したうえで、慎重に判断することが重要です。
ここでは、収入から社会保険料と所得(もうけ)に対する税金を支払ったあとの、手取り額の違いを、モデルケースを使って比較しています。
なお、試算上の社会保険料率および所得税率等は、令和3年4月現在のものです。
法人モデル
・資本金は1億円以下の一般の中小企業
・役員は本人のみ、他に従業員なし
・社会保険(協会けんぽ・東京支部)に加入
・収入は役員報酬および社会保険料に充当
・イメージ図
個人事業モデル
・個人事業主のみ、他に従業員なし
・国民健康保険(東京都港区)および国民年金に加入
・イメージ図
法人モデルの手取り額
所得金額別の手取り額はつぎのようになります。
このモデルでは、税金の負担よりも社会保険の負担が重く、結果的に、収入に対する手取りは、いずれも収入の6割水準となります。
個人事業モデルの手取り額
所得金額別の手取り額はつぎのようになります。
このモデルでは、健康保険・年金の負担よりも税金の負担が重く、収入に対する手取りは600万円までは収入の7割を維持できますが、700万円以上では6割台に下がります。
まとめ
法人モデルと個人事業モデルの手取り額の比較はつぎのようになります。
これをみると、いずれの収入でも手取り額は個人事業の方が法人よりも20~30万円ほど多くなります。
ただし、法人の場合は厚生年金(報酬比例部分)を65歳から受給することができるため、かならずしも個人事業の方が手取り額が多いとはいいきれません。
そこで、法人と個人事業の手取り額の差と、65歳から80歳までの厚生年金(報酬比例部分)の受給額を比較してみます。
なお、厚生年金(報酬比例部分)の年間受給額は年間報酬の1000分の5.481として計算しています。
この試算では、収入400万円までは手取り額の差が年金受給額を上回り、収入500万円以上では逆転します。
したがって、収入400万円までは個人事業モデルの方が有利で、500万円以上になると法人モデルの方が有利にみえます。
ただし、手取り額の差を年金受給開始(65歳)まで運用して増やすことはできますので、やり方しだいでは、法人モデルが有利にはなりません