節税のコスト(代償)
租税特別措置法には、個人が政党等に対して寄付金を支払った場合に、寄付額に応じて所得税の納税額を少なくする政党等寄付金の特別控除制度があります。
具体的には、個人が平成7年1月1日から令和6年12月31日までに支払った政党または政治資金団体に対する政治活動に関する寄付金のうち一定のものについて、支払った年分の所得控除の適用を受けるか、または一定の算式で計算した金額(ただし、その年分の所得税額の25%相当額が限度)の税額控除の適用を受けるか、どちらか有利な方を選択できるという制度です。
いま永田町では、複数の国会議員が、自身が代表を務める政党支部に寄付金を支払い、この制度を使って所得税の納税額を減らしていたことが明らかとなり、大きな問題となっています。
国会議員が代表を務める政党支部は、国会議員の第2の財布とも呼ばれていて、政党支部に寄付したおカネは、議員自身が自由に使えるそうです。
また、政党支部に寄付したおカネを、議員個人の資金管理団体に移すことも可能で、自分のおカネを右から左に動かしただけで、税金の優遇を受けるのは問題だというのです。
指摘を受けた国会議員は、その多くが法律上は問題がないと弁明しています。
しかし、ここで問われているのは、議員が法律を犯したかどうかではなく、寄付を通じて国民の政治参加を促すという立法趣旨に反する行為を、政治家自身が行なっているというモラルの欠如です。
納税は国民の義務です。
ですが、誰しも程度の差はあれ、支払う税金を少しでも減らしたいという気持ちが必ずあります。
しかし、このあたりで線引きしようという、自分自身を自制するモラルが大事です。
度を越した節税によって、周囲の人からの信頼を失っては元も子もありません。
今回の政治家の寄付問題は、モラルを欠いた節税コスト(代償)が、意外に大きいということを教えてくれています。