赤字企業とGDP
IMF(国際通貨基金)の経済見通しによると、2023年の日本の名目GDPは前年比マイナス0.2%の4兆2,308億ドル(約633兆円)、一方ドイツの名目GDPは前年比プラス8.4%の4兆4,298億ドルで、日本の名目GDPは米国、中国に続く世界3位から4位に転落するそうです。
その要因は、最近のドル高・円安の影響や、ドイツの高インフレの影響が大きいようですが、長期的には、日本の成長力の低下が経済(GDP)の低迷を招いています。
日本の生産性は他国に比べて低いといわれます。
話題に上る労働生産性を見ると、2022年の日本の労働生産性は1時間当たり49.9ドルで、OECD加盟38カ国の中の27位、米国の6割水準に留まります(日本生産性本部による労働生産性の国際比較)。
そして、主要先進7カ国で見ると、データが取れる1970年以降はずっと最下位の状況です。
日本の政治家は、労働生産性を引き上げることが日本の経済成長(GDP増加)につながると言いますが、生産性という言葉を都合よく使うため、本来の意味とは異なる理解につながる恐れがあります。
生産性は、企業が生み出すアウトプット(生産量や付加価値額などの成果)を企業が投入するインプット(働く人数や時間、各種の設備など)で割った指標です。
例えば、時間当たりの労働生産性は、労働者が1時間働いたときに生み出される生産量や付加価値額を表しますが、労働生産性が高いことと、企業の生産量や付加価値額が増えることは同義ではありません。
すなわち、企業の労働生産性が上昇したからといって、必ずしも企業の生産量や付加価値額が増えるわけではないのです。
日本は、中小企業の6割以上が赤字企業だといわれています。
そのため、中小企業の生産性が向上すれば、日本全体の生産性の向上につながるともいわれます。
政府は、儲かっていない中小企業の生産性を底上げするために、様々な生産性向上のノウハウの提供や補助金などの財政支援を実施しています。
しかし、日本全体の生産性を上げるためには、より多くの生産性の高い企業に活躍してもらう以外にありません。
市場の競争メカニズムを効果的に働かせることが、生産性の低い企業を市場から退出(倒産や廃業)させ、生産性の高い企業が市場で活躍する機会を増やします。
儲かっていない中小企業の生産量や付加価値額を底上げすることでは日本全体の生産性は上がりません。
残念ながら、今の日本には、多くの赤字企業を市場に温存させる余裕は殆ど残っていないのです。