日本社会のDX
政府が普及を進めているマイナンバーカードの申請件数が、2月21日時点で日本の総人口の7割に達したそうです。
マイナンバーカードは、様々な機関に登録された個人の情報が、ある特定の個人の情報であることを確認するために利用します。
運転免許証やパスポートと同様の本人確認や、各種行政手続きをオンライン上で完結できるなど、マイナンバーカードは、国民にとって利便性が高く、公平・公正な社会を実現するためのツールとして、日常生活での活用が期待されています。
政府はマイナンバーカードの利用を促進するため、従来の健康保険証を原則廃止して、マイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」に一本化していく方針です。
昨年は健康保険法に基づく規則を改正し、保険医療機関が患者の「マイナ保険証」による資格確認に応じることや、そのための顔認証付カードリーダーなどの設備導入を義務づけました。
規則はこの4月にも施行予定ですが、都内の医師・歯科医師らは国を相手取り、規則による義務づけは違法として東京地裁に訴状を提出しています。
報道によれば、原告らは、規則に従わないと保険医療機関の指定が取り消される恐れがあり、多大な費用や情報漏洩リスクの負担を余儀なくされると主張しています。
何かをアナログからデジタルに置き換えるとき、今やっていることを単純にデジタルに置き換えるDigitization(デジタイゼーション)と、やり方や在り方自体も変えてデジタル化していくDX(デジタルトランスフォーメーション)を混同しがちです。
広義のDXには、AIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を社会に浸透させながら、国民生活をより良いものに変革していくという意味が含まれます。
政府は、日本の社会全体の利便性向上にはDXが不可欠であると考えるからこそ、マイナンバーカードの普及に力を入れているはずです。
単に規則を変更して、保険医療機関に患者の「マイナ保険証」による資格確認を義務づけたとしても、それだけでは患者や保険医療機関の利便性は高まりません。
中途半端にアナログとデジタルが混在する状態では、逆に利便性が落ちることもあります。
「マイナ保険証」の利用は日本社会のDXを実現していくための第一歩です。
政府は「マイナ保険証」の利用によって患者や保険医療機関の利便性が向上していく姿を具体的に示しながら、実現のための困難な問題の解決に向かって、国民に粘り強く理解を求めていく必要があります。