年収の壁の解消
岸田政権が目指す、成長と分配の好循環に向けて賃上げムードが高まっています。
もっとも、今年に限らず、毎年継続して働き手の収入を増やすという、構造的な賃上げまでは、数多くのハードルがあります。
日本の企業の人手不足は、年々深刻化しています。
人手不足の解消には賃金を含む労働条件の改善が必要です。
しかし、少子高齢化による働き手の減少は、一企業努力で解決できる問題ではありません。
最近議論に取り上げられている、年収の壁の問題はその一つでしょう。
主婦などの短時間労働者が働く時間を増やして収入がある一定の水準を超えてしまうと、厚生年金と健康保険の保険料の負担が発生します。
すると、かえって手取りの収入が減ることになるため、労働者が働く時間を調整して、企業の人手不足が無くならないというものです。
この問題は、収入が少なければ配偶者の扶養扱いとなって、保険料を支払わずに手厚い保障を受けられるという社会保険制度に原因があります。
政府は、過去に何度か制度の見直しに向けた検討を行なってきましたが、最終的な結論は得られずに現在に至っています。
岸田政権が目指している、労働者の賃金の引上げは、当然、主婦などの短時間労働者の収入も増やすことになります。
しかし、年収の壁がある限り、働く時間は調整され、かえって今までよりも働く時間が減るということにもなりかねません。
年収の壁の解消は、岸田政権の目指す、成長と分配の好循環に向けて避けては通れない問題といえます。
これから本格化が予想される制度改正に向けた政府の取り組みに大いに期待します。