日本国債の信認確保
長引く物価高を背景に与野党の国会議員からは、消費税の減税を求める声が上がっています。
消費税は国民生活の根幹をなす社会保障の重要財源であり、減税による不足分を補う、有効な代替案が示されなければ、消費税減税の議論は成り立ちません。
日本の国債の発行残高は過去の歳入不足を補うために大きく膨らんでおり、毎年の国債発行額はコロナ禍以降の歳出拡大によって200兆円前後に高止まりしています。
金融市場にはじわじわと国債の需給不安が広がりつつあり、消費税減税を国債の増発に頼るのは危険な状況です。
本来日本国債の主な買い手は銀行や生保などの国内金融機関です。
しかし長い間、大規模な金融緩和を続ける日銀が大量に国債を買い続けてきました。
ところが最近は、長引く物価高を受けて日銀の金融政策は正常化に向けて動き始めていて、国債の購入姿勢にも変化が現れています。
一方、本来の買い手である国内金融機関は、長期金利の上昇リスクやインフレ懸念の高まりから、積極的な国債の購入には慎重です。
また、人口減少による国民貯蓄の縮小や財源の裏付けがない財政出動が外国人投資家の国債購入を不安視させて、将来的に安定した購入需要を確保できるかは不透明です。
更にこうした状況の中で、日本国債の利回り上昇が進んでいくとすると、やがては日本の財政運営に対する懸念の増大と金融市場不安へと繋がります。
政府が明確な将来像を示さず、漫然と多額の国債発行を継続する状態は、国債の安定消化の実現にとって大きな妨げとなります。
政治家は国債を発行すれば誰かが買ってくれるという前提を捨てて、将来を見据えた現実的な財政運営を議論すべきです。
国の財政規律の回復と日本国債の信認確保が同義であるという事実を、政治家はもっと肝に命じなければなりません。