当分の間
自由民主党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党、公明党、共産党の与野党6党は、10月31日の実務者協議で、ガソリン税の暫定税率を年末に廃止することで合意しました。
ガソリン税の暫定税率は、道路整備などの財源確保を目的として1974年に導入され、当初2年間の臨時措置でしたが、繰り返し延長されました。
民主党政権下の2010年には、ガソリン税の暫定税率は廃止されることになりますが、表現を変えて期限の定めのない、当分の間の特例税率として存続しました。
法律の世界で当分の間とは、その法律が改正または廃止されるまでは法律の効力が続くという意味です。
あえて条文に期限の定めのない表現を入れるのには理由があります。
たとえば、条文に具体的な期限を書いてしまうと、期限が到来するたびに期限を延長する手続きが必要になります。
そのため、将来の状況が読み切れないときは、期限を設けない当分の間という表現が便利です。
また、政治的な合意形成が難しい場面では、その妥協策としても使われます。
政党や政治家の間で制度の大枠が合意できたとしても、細部の決着までに時間を要する場合は、その部分を先送りしながら制度を動かすことができます。
ただし、当分の間が何十年にも及ぶとなると話が違います。
国と地方では、ガソリン税の暫定税率廃止によって、年間約1.5兆円の税収減が見込まれます。
しかし、今回の与野党6党の合意では、代替財源の結論は先送りされました。
今後は、代替財源の確保について、歳出の削減に加え、法人向け租税特別措置の縮小廃止や高所得者の税負担見直しなど、一年を目途に結論を出すようです。
代替財源の確保なくして、ガソリン税の暫定税率を廃止したということはできません。
政治は、何十年も先送りしてきた宿題について、責任ある答えを出さなければなりません。