貯蓄から投資へ
2023年度の税制改正大綱に少額投資非課税制度(NISA)の恒久化と投資期間の無期限化が盛り込まれ、個人が株式に投資する際の非課税枠が拡大します。
日本の家計が所有する金融資産の残高は約2,000兆円と巨額です。
しかし、そのうち半分以上を現預金が占めます。
日本では学校などで投資や資産運用について学ぶ機会がほとんどなく、日本人は欧米人に比べると投資自体に慎重です。
日本の高度経済成長を支えてきた年配の世代は、預金と年金で安定した老後の生活ができたので、難しい投資の勉強をする必要がありませんでした。
かつては、定期預金に年間5%程度の利息がつくのが当たり前で、銀行に100万円を預けさえすれば、ノーリスクで1年後に105万円を手に入れることができました。
会社員は若い頃から給与天引きで社内預金や財形貯蓄をおこない、必要なお金はそれだけで貯めることができました。
しかし、バブル崩壊後の長引くデフレ不況は、そういう時代の幕を下ろしました。
また、思いのほか少子高齢化が進み、年金だけでは安心して老後を迎えることができなくなってきました。
今の時代は、個人が自分自身で適切な投資をおこない、必要な財産を作らなければならなくなりました。
少額投資非課税制度(NISA)の拡充は、個人の現預金を株式へとシフトさせて、将来の財産形成を後押しするに違いありません。
しかし、その投資先が国内株式になるかというと、それはまた別の話です。
世界のITインフラを支配するグーグルやアマゾン、アップル、マイクロソフトなどの企業はすべて米国に集中しています。
次世代の電気自動車で急成長しているテスラも米国企業です。
こうした世界の有力企業と比較すると、日本企業の取り組みは不十分であるといわざるを得ません。
確かに、個人の貯蓄を投資にシフトさせる税制は重要です。
しかし、それとともに大事なのは、そのお金が国内企業に向けられるように、政府は企業の成長力を高める政策を強力に推し進める必要があります。