定額減税の戻し方

令和6年度の税制改正で、所得税と個人住民税の定額減税が決まりました。

納税者本人と配偶者、扶養親族について、各人、所得税3万円、住民税1万円の合計4万円の税金が還付されることになります。

しかし、定額減税の実施にあたり、会社の給与計算実務に多大な負荷がかかることが心配されています。

所得税の定額減税は、6月給与の源泉徴収税額から一斉に控除を開始します。

給与計算実務がいつもと大きく違う点は、最初の減税をするときまでに、居住者である同一生計配偶者の有無と居住者である扶養親族の⼈数を把握しなければならないことです。

ここでの同一生計配偶者とは、納税者本人と生計を一にする配偶者のうち、合計所得⾦額の見積もり額が48万円以下の⼈をいい、扶養親族とは、年末調整の控除対象扶養親族だけでなく、年末調整ではカウントしない16 歳未満の扶養親族を含むものです。

また、毎月の減税のやり方は、6月給与の源泉徴収税額から定額減税(3万円×人数)を控除し、6月から控除しきれない分は、7月以降の給与の源泉徴収税額から順次控除していきます。

毎月の給与の源泉徴収税額が5万円で、定額減税が12万円(納税者本人、配偶者、子供2人の合計4人)の場合には、6月の源泉徴収税額は0円(=5万円-5万円)、7月の源泉徴収税額も0円(=5万円-5万円)で、8月の源泉徴収税額が3万円(=5万円-2万円)、9月以降はいつもどおり5万円を毎月源泉徴収していきます。

会社は、こうした給与計算を従業員ひとり一人に行わなければならず、かなりの実務負担が発生します。

また、住民税の定額減税のやり方が、所得税と違う点も大きな負担です。

住民税は、前年の所得をもとに、今年6月から翌年の5月までの給与を支払う際、毎月決まった金額の住民税を源泉徴収します。

しかし、今回の定額減税では、6月の給与からは住民税を源泉徴収せず、定額減税を反映した住民税を7月から翌年5月までの給与から、毎月源泉徴収するのです。

例えば、住民税が15万円、定額減税が4万円の場合では、6月給与の源泉徴収税額は0円、7月から翌年5月までの給与の源泉徴収税額は1万円(=(15万円-4万円)÷11か月)になります。

今回の定額減税では、なるべく早く国民に減税の恩恵を実感してもらうために、当局が減税のやり方を考えたのでしょう。

しかし、そのための実務はかなり複雑なうえ、定額減税が恒久化したものではないために、システム改修等の人手以外のコストをかける対応は現実的ではありません。

令和6年度の税制改正法案の成立には、まだ少し時間があります。

定額減税の戻し方については、費用対効果を十分考慮したうえで、簡便な方法に修正されることを希望します。

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