金融経済の影響
8月初めの東京株式市場では、円高の進行と米国景気の減速懸念が重なり、日経平均株価はわずか2日で3,000円以上も値下がりしました。
おカネが動く経済活動には、モノやサービスの動きを伴う実体経済と、おカネだけが動く金融経済があります。
本来、おカネだけが動く金融経済には、実体経済においてモノやサービスが円滑に動くように、実体経済のおカネが必要なところに必要なおカネを届ける役目があります。
しかし、近年続いた世界的な金融緩和が巨額の余剰マネーを金融経済へと流し込み、金融経済に滞留するおカネの量は、実体経済を円滑に動かすために必要なおカネの量を大きく上回る水準にまで膨張しています。
その結果、将来の予測や様々な思惑が作り出す金融経済のおカネの動きが実体経済に大きな影響を与えるほど強力になりました。
ここ数日の円ドル相場の変動をみれば、金融経済の変動が実体経済に与える影響の大きさは明白です。
今回の円高の進行は、金融マーケットにおける日米間の金利差縮小の思惑が原因です。
そして、その影響は、輸出金額よりも輸入金額が大きい企業、業種でいえば、エネルギーや食品、小売(輸入)などではプラスとなる一方で、輸入金額よりも輸出金額が大きい企業、自動車や鉄鋼、機械、半導体、インバウンド需要などにはマイナスです。
今後も、金融経済に巨額の余剰マネーが滞留するかぎり、こうした状況が大きく変化することはありません。
当面は、今秋実施される米国大統領選挙の結果や、日米中央銀行の金融政策の違いによる金融経済の動きを注視しながら、実体経済である自社ビジネスへの影響を考慮する毎日が続きそうです。