防衛費増額と増税

岸田首相が防衛費増額の財源として1兆円程度の増税案を示したことに、政府・与党から異論が出ています。

今は増税するタイミングにないという意見や、議論が不十分で決定プロセスに問題があるという意見です。

ロシアの軍事侵攻をきっかけに、北朝鮮のミサイル攻撃や台湾海峡の有事に対して、日本の防衛力強化を望む声は大多数です。

しかし、その財源となると意見が分かれます。

増税反対派は、税負担の増加が国内景気を悪化させるとして防衛費の増額は国債発行で対応すべきと主張します。

これに対して、財政規律派は、防衛力強化は将来の何年間にも及ぶもので、安定財源で確保すべきと主張します。

政府の有識者会議が11月にまとめた報告書では、防衛費の増額は幅広い税目による負担が必要と指摘しています。

日本の国債は、今年度末に発行残高が1000兆円を超える見込みのため、英国のトラス・ショックを考えると、安易な国債増発に頼ることは危険です。

新型コロナ禍以降、プライマリーバランスの黒字化が困難な状況だからこそ、追加の財政支出に対しては財政規律を重視する姿勢を堅持しなければいけません。

税を国全体で広く公平に負担してもらう考え方には、公平・中立・簡素の3つの原則があります。

公平の原則は、税金の負担が、それぞれの負担能力(担税力)に応じてなされることをいい、等しい負担能力のある人には等しい負担を求める考え方(水平的公平)と、負担能力の大きい人にはより大きな負担をしてもらう考え方(垂直的公平)の2つがあります。

税制では、この2つの考え方のバランスをとることが重要になります。

中立の原則は、税制が経済社会に何らかの影響を与えることが避けられないため、税制が個人や企業の経済活動における選択を歪めないようにすることをいいます。

簡素の原則は、税制の仕組みを可能な限り簡素にし、理解しやすいものにすることをいいます。

税制が簡素であれば、納税者側のみならず、執行側のコストを安価にすることができます。

報道によれば、政府は防衛費増額の財源として法人税やたばこ税の増税を検討するようです。

公平・中立・簡素の3原則に照らして、納得できる議論を期待します。

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