世代間の公平
政府内には、異次元の少子化対策の財源について、社会保険料を利用する案があるようです。
社会保障制度の目的が、突然の病気・怪我や老後の備えであることを考えると、出生率の引き上げのため、社会保険料が使われるのにはやや違和感があります。
今回の少子化対策では、増税しないことを前提に財源を議論していることが、恐らくその原因でしょう。
税金や社会保険料は、国民が広く公平に分かち合って負担していくものです。
公平負担の考え方は、経済力が同じ人には同じ負担を求める一方、経済力のある人にはより大きな負担を求めるというのが基本です。
さらに、近年は世代間の公平という視点がとても重要になりつつあります。
たとえば、年金や医療、介護保険などの社会保障では、高齢者が優遇されていると感じる若者は、非常に増えています。
また、国の多額の借金(国債残高)ついても、将来世代に負担を先送りしているという意味で、世代間の不公平を引き起こしています。
日本は、バブル崩壊後、長くデフレ経済が続いて活力が低迷しました。
そして、その間、少子高齢化と人口減少が着実に進みました。
一方、世界は、新興国が急速に産業競争力をつけて経済発展を遂げてきました。
日本は、急激に進歩するIT活用やAI技術、急速に進む社会と産業のデジタル化、脱酸素化などの先端分野では、他の先進国に大きく遅れを取っています。
日本の税制や社会保障制度の見直しが急務ですが、こうした世界の動きに適応する社会と産業の構造変化に見合うことが必要です。
日本の未来は若者の活力にかかっています。
異次元の少子化対策の財源の議論では、異なる世代を比較して負担の公平がきちんと保たれているか、負担だけを将来世代へ先送りしていないか、若者が未来への希望を失わないようにすることが肝心です。