地方交付税の限界
東京都のふるさと納税による減収額は年々増加し、令和7年度の減収額は2,161億円(都民税分862億円、区市町村民税分1,299億円)、これまでの累計は1兆1,593億円にのぼります。
都市部は居住人口が多く、個人の所得水準が高いため、ふるさと納税の減収額が大きく、地方自治体の財政を圧迫する問題が深刻化しています。
一方、ふるさと納税の寄付収入が多い地方自治体では、使いきれない寄付金が急増しています。
こうした自治体の多くは、寄付金をいったん基金に積み上げ、翌年度以降の事業に充当しますが、使い道が見つからなければ基金の残高が積み上がります。
地方自治体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方自治体が一定の水準を維持できるように、本来地方の税収入とすべきものを国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する制度に地方交付税があります。
しかし、現在の地方交付税は、ふるさと納税の減収が大きい都市部を交付対象から除外する一方で、ふるさと納税の寄付収入が多い地方自治体に税金を交付しています。
先週9日に、ふるさと納税で多額の寄付収入を得たことを理由に国が地方交付税を減額したのは違法として取り消しを求めた訴訟の差し戻し控訴審判決が大阪高裁でありました。
裁判長は、国の減額決定を違法として取り消した一審の大阪地裁判決を支持して、国の控訴を棄却しました。
裁判長は判決理由で、ふるさと納税の寄付収入を理由に地方交付税を減額できるかは「立法者が政治的、政策的観点から判断すべきだ」として、総務省による省令改正は「地方交付税法の委任の範囲を逸脱して違法」と結論づけました。
地方自治体の返礼品競争が生み出すふるさと納税制度の歪みは大きく、現行の地方財政の運用ルールでは十分な対応ができません。
このままふるさと納税の利用が増えるほど、行政サービスの提供に支障をきたす地方自治体と、使い道のない基金が積み上がる地方自治体の格差の広がりは見過ごすことができません。
国は、ふるさと納税制度を持続可能なものとするため、立法府としての地方財政の制度改正を急がなければいけません。