中小企業の業務ミス対策
今年4月に山口県阿武町で、新型コロナの困窮世帯に支給する給付金4,630万円を、町が誤って男性ひとりの口座に振り込む事件が起きました。
最近では、この6月に東京都葛飾区が、区内の私立認可保育園に対して補助金5億円余りを過払いしていた事実が問題になっています。
どんな仕事でも、人間がする仕事にミスはつきものです。
しかし、システムやネットワークが発達して、ひとりでできる仕事の範囲が広がると、ミスしたときのダメージは大きくなります。
平成17年に証券会社の社員が、61万円で1株売りとすべき注文を1円で61万株売りと入力して大損害を与えたことや、日本全国の市町村でシステムの入力ミスや操作ミスが原因で固定資産税の課税誤りが多発していることは、その一例です。
ミスに気づかない仕事のやり方
多くの中小企業は、今いる社員の能力・適性に合わせて担当する業務を決めています。
そして、担当する業務に適した人間が社内にいない場合は、必要な人材を外部採用します。
このようにして、中小企業は適材適所を実現しますが、人員に余裕がないと、担当者が長期間異動せずに業務の属人化につながります。
そして、担当者がいないと業務が進まなかったり、担当者以外に業務に詳しい人間がいなくなり、やがて、上司でさえも業務の正確な状況がつかめずに、担当者のミスに誰も気づかない仕事のやり方が常態化します。
ミスを受け入れて、防止策に優先順位をつける
ミスを完全になくすことはできません。
上司が、ミスをしないように部下を何度も注意したり、ミスしたときに厳しく叱責すると、部下は確認作業に必要以上の時間をかけたり、気持ちが萎縮してミスを隠すようになります。
むしろ、ミスは誰にでも起きると割り切って、部下がミスしたときに、上司に報告しやすい環境をつくることが大切です。
とくに、人員が少ない中小企業では、小さなミスまで防止するのは現実的ではありません。
小さなミスは、未然に防ぐよりも、ミスした後に素早く対処する方が経済合理的です。
したがって、部下が小さなミスを犯したときは、素早く上司に報告することを評価します。
そして、限られた人手は、できるだけ重大ミスを防ぐことに振り向けます。
商品やサービスの品質や納期、仕事の関係者や社員の安全や健康など、ミスが起きたときに会社が受けるダメージの大きさを考えて、重大事態につながるミスから優先して防ぎます。
また、法律やシステムのような専門業務のミスは、外部の専門家に確認を依頼することが有用です。
個人のミスは組織のミスという意識を共有しながら、重大事態につながるミスに絞って対策を講じることが現実的です。