海外進出と国際税務
中小企業の海外進出が増えています。
以前は、コストの安い海外に製造拠点を設ける製造業が多かったのですが、現在は、消費者市場に新規参入する小売業やサービス業の進出が増えています。
人口減少が続く国内市場から、人口増加や経済成長の著しい新興国市場に目を向けた動きといえます。
中小企業が海外進出する場合、国内では馴染みのない国際税務が関係するため、注意が必要です。
例えば、海外取引では1つの取引に対して2ヵ国以上で課税される場合があります。
こうした課税を二重課税といいますが、二重課税に該当すると企業の税負担が非常に重くなるため、その解決手段として2ヵ国間の租税条約が用意されています。
日本は、多くの国との間で租税条約を締結していますので、相手国との租税条約の有無を調べることで不要な二重課税を回避することができます。
また、外国子会社を設立して海外進出する場合は、外国子会社合算税制や移転価格税制に気をつけることが求められます。
外国子会社合算税制は、国内法人が実質的活動を伴わない外国子会社を利用して日本の法人税の負担を軽減・回避する行為を防止するための税制です。
具体的には、外国子会社が同税制の定めた基準を満たさない場合に、外国子会社の所得を国内法人の所得とみなして課税することになります。
また、移転価格税制は、国内法人が外国子会社等との取引を通じて、国内法人の所得を外国子会社等に移転することを防止するための税制です。
したがって、国内法人が外国子会社等と通常と異なる価格(移転価格)で取引した場合は、その価格を通常の価格(独立企業間価格)とみなして所得を再計算します。
中小企業の海外進出には、単なる貿易取引から外国子会社の設立まで、様々な形態があります。
これから海外進出を本格的に検討する際は、国際税務について事前に調べることをお勧めします。