値上げの決断

7月7日の日本経済新聞によると、国内主要企業の社長100人へのアンケートでは、前年度よりも調達コストが増える企業の割合は9割に達し、そのうち8割は価格転嫁が不十分と答えています。

また、年後半に値上げを実施または検討する企業の割合は8割を超えていて、値上げが経営者の一大テーマとなっています。

企業が利益や売上を上げていくには、値上げは有効な手段です。

ですが、多くの経営者は、今回のコストの上昇に対して、実際には値上げをしたくても、なかなか決断できずにいます。

その理由は、商品・サービスの中身を変えずに値上げをすると、顧客の理解を得るのが難しいからです。

判断先送りの問題

一般に、企業が意思決定をするまでには、多くの情報を集めて、リスクの大小やメリット・デメリットなどを十分に検討します。

しかし、意思決定にはリスクがあるために、経営者に迷いがあると、企業は意思決定をすることができません。

経営者の迷いの理由が、判断材料の不足の場合は仕方ありませんが、単に失敗したくないという気持ちの場合は問題があります。

企業がリスクマネジメントの精度をどんなに上げたとしても、リスクを完全に排除することはできません。

また、いつまでも立ち止まって考えていたり、周囲の状況をうかがっていても、事態は一向に改善しません。

経営者は、自分の気持ちの弱さを克服して、自らの判断のリスクに向き合い、一つ一つの物事を冷静に決断していく必要があります。

リスクの排除

リスクを排除する有効な手段は、リスクから生じる損害を抑制しつつ、順次リスクを確定させていくことです。

その過程で生じる損害は、もちろん企業にとって痛手になりますが、リスクを排除するためのコストとみれば、前向きに考えることができます。

商品・サービスの中身を変えずに値上げをすれば、当然売り上げは減少します。

売り上げが減少すれば利益が減って、企業は痛手を被ります。

しかし、見方を変えれば、値上げをした商品・サービスのうち、少なくとも売れた部分については、コストの上昇という課題をクリアしたことになります。

売り上げが減って業績が苦しいことに変わりはありませんが、企業としては値上げリスクを排除したことになります。

経営者は、企業が値上げ問題の次にある売上拡大という問題に取り組めるように、できるだけ早く値上げの決断をすることが重要です。

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