足し算の経営
商品・サービスの価格戦略に原材料不足や円安によるインフレが、難問を突きつけています。
仕入コストの上昇分を販売価格に上乗せするのが難しいのです。
会社が事業を継続するうえで販売価格の設定は一番重要です。
多くの事業者が、仕入コストに一定の利益を上乗せして販売価格を決めようとします。
ですが、実際の販売価格は事業者の希望どおりには中々なりません。
大抵は、ライバルの価格や顧客の評価を気にして、コストを切り詰めたり、利益を削ったりして、できるだけ安い価格になるように努力します。
確かに、商品・サービスの価格が安いことは、顧客にはとても魅力的で強い購買動機に繋がります。
ですが、価格が安いことが購買動機の一番になってくると問題です。
事業の継続には一定の利益が必要です。
販売した商品・サービスの利益が足りないと、事業者はより多くの量を販売して、その利益を確保しなければなりません。
結果的に、相当量の販売が事業継続の前提となります。
今回のインフレでは、そうした事業ほど深刻なダメージを受けています。
利益は商品・サービスの販売によって得られます。
まずは、顧客に商品・サービスが販売できなければ話が始まりません。
その意味では、販売価格から仕入コストを差し引いても利益が残るように、引き算を成立させることが最低条件です。
しかし、事業の継続には一定の利益が必要なため、販売価格が仕入コストに必要な利益を上乗せしたものになっているという、足し算の検算も不可欠です。
必要な利益を足し算ではなく、薄利多売のような掛け算で作り出すやり方は、平時には有効でもインフレ時には脆弱です。
事業者は、速やかに自社の価格戦略を見直して、顧客が満足する価格と事業者の必要利益が確保できる価格、双方の価格が成り立つ商品・サービスの価値創造に取り組むべきです。