消費税負担の逆進性
消費税インボイス(適格請求書)制度が始まりました。
いつの時代、どこの国でも、自分が支払う税金が増えて平気だという人はいません。
消費税は、以前から、税を負担する消費者の意見として、所得の少ない人が負担する税の割合が所得の多い人に比べて高くなるという、税負担の逆進性が問題視されてきました。
消費者は、商品・サービスを購入するとき、現在10%または8%の税率で消費税を負担します。
所得が多い人も、所得が少ない人も、同じ率で税金を負担することから、一義的には公平な税金であるといえます。
しかし、一般の消費者が日常生活で消費する商品・サービスで消費税の負担を見てみると、所得の金額に占める消費税の金額の割合は、所得の少ない人の方が所得の多い人より高負担であることがわかります。
税の役割を、個人間の所得格差を是正するものと定義すれば、消費税の金額の負担においても、所得の多い人により多くの消費税を負担してもらう、税負担の累進性の考え方が導入されても良いことになります。
消費税インボイス制度の背景の一つに、消費税の益税を無くす目的があるといわれています。
これは、消費税の免税事業者が、消費者の負担した消費税を国に納付せずに、自分の利益にしている状態を解消しようとするものです。
消費税は、事業者が国に納めるために消費者から一時的に預かっているだけという原則に戻って、益税の問題の解決を目指すものです。
ところが、実際には、消費税インボイス制度の開始後も、一般消費者向けの商品・サービスの販売事業者については、インボイス登録をせず、免税事業者のまま、引き続き、消費者の負担した消費税を自分の利益にすることが可能です。
また、消費税の簡易課税制度を選択している事業者にあっては、従来から有利な計算方法が認められているため、消費者から預かった消費税額よりも少ない金額を国に納めることができます。
10月1日に始まった消費税のインボイス制度の目的の一つである、消費税の益税の解消は、簡単に実現できるものではありません。
国は、インボイス登録をおこない、課税事業者となった小規模事業者に対する経過措置(2割納付特例)を今後恒久化するなど、消費税を納める事業者の税負担についても、逆進性の軽減に取り組んでいく必要があります。