エンジェル税制の見直し
日本人は欧米人と比べるとリスクがあるチャレンジを避ける傾向にあるといわれます。
実際に、戦後の日本では終身雇用制が導入され、新卒で入社した会社に定年退職まで働くことが普通でした。
現在も学生の就職活動では安定した雇用と働きやすさが重視され、新卒生を含めた多くの人が長く働ける大企業への就職を目指しています。
とはいえ、ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、近年は、たとえ大企業であっても倒産するリスクは以前に比べれば増加しています。
そんな中、見かけの安定よりも自分のやりたいことを優先して、発展途上のスタートアップ企業を志望する人も着実に増えてきました。
政府は、2022年をスタートアップ創出元年と位置づけ、勢いのあるスタートアップの出現を目指して、さまざまな施策を展開しています。
その一つであるエンジェル税制は、個人投資家が国内スタートアップ企業に投資する際の税優遇として、設立間もないスタートアップ企業の資金調達を後押しする狙いがあります。
中小企業庁によれば、令和4年5月20日時点のエンジェル税制の投資額は12,636百万円、利用企業数322社、個人投資家数(延べ人数)11,929人となっています。
エンジェル税制の利用実績は、令和元年以後の伸びが大きく、投資に馴染みのない日本での起業家支援税制として一定の役割を果たし始めています。
しかし、類似の税制がある米国に比べて利用実績はまだまだ少なく、多くの起業家を創出するという目的は達成できていません。
エンジェル税制の課題は、適用手続が複雑でわかりにくく、投資先企業の要件が厳しいことが指摘されています。
政府は、日本経済の復活の起点として、勢いのあるスタートアップ企業を数多く出現させるために、エンジェル税制の改正に早急に着手すべきです。