個人事業主の小規模企業共済の活用その2
個人事業主には、退職金がなく、国民年金しかもらえないなど、会社員とくらべると老後の生活保障は十分とはいえません。
もちろん、個人事業主に定年はありませんから、健康なら長く働いてカバーすることはできます。
しかし、将来のことは誰にもわからないため、一定の備えがあると安心です。
ここでは、個人事業主の老後の生活の備えとして、小規模企業共済の活用をみています。
なお、小規模企業共済制度および各種の税制は、令和3年4月現在のものです。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、国が運営する個人事業主や中小企業経営者の退職金の積み立て制度です。
おもな特長は、つぎのとおりです。
・月々の掛金は1,000円から70,000円まで、支払掛金は全額所得控除が可能
・将来の受取り額(共済金)は掛金を1.0%~1.5%の予定利率で計算
・共済金の受取りは一括の場合は退職所得、分割の場合は公的年金等の雑所得の扱い
・事業資金が必要な場合は、支払掛金の範囲内で資金の借り入れが可能
このうち、共済金受取時の所得区分(退職所得・公的年金等の雑所得)という特長を活かして老後の備えを効果的におこなうことができます。
共済金の一括受取(退職所得)
個人事業主が事業をやめて共済金を一括して受け取る場合、共済金は退職所得として課税されます。
ただし、退職所得は、収入が老後の生活資金であることなどから、課税上優遇されています。
具体的には、 (退職金 - 退職所得控除)× 1/2 = 課税所得 となり、これに所得税と住民税がかかります。
たとえば、月額3万円の掛金を30年間支払い、共済金1300万円を一括して受け取る場合では、
共済金1300万円 < 退職所得控除1500万円(40万円 × 20年 + 70万円 × 10年)
となるため、課税所得はなく税金はかかりません。
また、かりに受け取る共済金が退職所得控除を上回るとしても、課税所得は2分の1に減額されるため、税金の負担は軽くなります。
共済金の分割受取(公的年金等の雑所得)
個人事業主が事業をやめて共済金を分割して受け取る場合、共済金は公的年金等の雑所得として課税されます。
ただし、公的年金等の雑所得は、年金を受け取る人の担税力が比較的小さいことを理由に、課税上優遇されています。
具体的には、 退職金 - 公的年金等控除 = 課税所得 となり、これに所得税と住民税がかかります。
たとえば、月額3万円の掛金を30年間支払い、共済金1300万円を15年間に分割して毎年94万円ずつ受け取る場合は、国民年金78万円とあわせて公的年金等の収入は、172万円になります。
このとき、ほかに収入がなく、年齢が65歳以上であれば、課税所得は、
収入172万円 - 公的年金等控除110万円 = 62万円 となり、
基礎控除(所得税48万円・住民税43万円)を差し引いたあとの税額は、
所得税と住民税をあわせて3万円ほどになります。
収入に対する税金の負担はかなり軽減されているといえます。
まとめ
個人事業主の老後の生活の備えとして、小規模企業共済を活用することは有効です。
将来に受け取る共済金は、課税上の優遇をうけて税負担を軽減することができます。