資産課税の強化

国の財源が限られる中で、資産課税を強化すべきだという議論が広がっています。

背景には、所得格差だけでなく資産格差の拡大があります。

所得は毎年変動しますが、資産は世代を超えて蓄積されやすく、格差が固定化しやすいという指摘もあります。

しかし、この議論は税制の基本を踏まえて慎重に考える必要があります。

税制には大きく分けて、フロー課税とストック課税の二つがあります。

フロー課税は、一定期間に生まれた所得や消費という経済活動に着目して課税し、所得税や消費税がこれにあたります。

一方、ストック課税は、ある時点で保有する資産に対して課税する仕組みで、固定資産税や相続税が代表例です。

現在の税制の中心はフロー課税です。

所得や消費は経済活動との結びつきが明確で、担税力を把握しやすいという利点があります。

これに対して、ストック課税は、過去に課税された所得の蓄積に再び課税するという二重課税の指摘や、資産評価の難しさ、納税のための資産処分といった問題があります。

また、課税強化が貯蓄や投資へのインセンティブを損ない、資本流出や市場の不安定化を招く可能性も指摘されています。

もっとも、フロー課税だけでは把握しきれない富が存在するのも事実です。

株式や不動産の含み益のように、実現しない限り課税されない所得があります。

こうした課税の偏りを是正するという観点から、資産課税の見直しを求める声が出るのは理解できます。

しかし、重要なのは、資産課税を強化するか否かという二分法ではなく、どの資産に、どの程度の範囲で、どのような目的で課税するのかという制度設計の視点です。

税制は経済活動や社会のあり方に深く影響を及ぼします。

資産課税強化の検討にあたっては、理念だけでなく、実務上の課題や国際的な動向も踏まえた冷静な議論が求められます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

前の記事

性悪説と性善説