税法の実質主義
法人税法は第11条に、「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する」とし、同様の規定は所得税法(第12条)や消費税法(第13条)にも置かれています。
これらは、税法の実質主義や実質課税の原則という考え方に基づくものですが、規定の文言の意味や内容が必ずしも明確でなく、その解釈も統一されていないため、実際の解釈・適用では問題となることが少なくありません。
現実の社会には、様々な経済取引があります。
その中には、法律上の形式・名義と実質が必ずしも一致しない取引というものが存在します。
課税制度において最優先すべき事項は、制度に対する納税者の信頼であり、そのためには納税者間の課税の公平が実現されなければなりません。
課税の公平の実現には、納税者の実質的な担税力に着目して課税することが不可欠なことから、税法では実質主義という考え方を持ち出し、法律上の形式・名義だけを課税の基準とせず、必要に応じて実質の担税力を課税の基準にできるようにしています。
もっとも、この実質主義は、たとえば、法人税法第11条の適用をある時は税務当局が言い出し、また、ある時は納税者が言い出すように、その間口は広く奥行が深いために争いとなります。
実質主義に基づく規定の解釈・適用については、過去の判例や裁決を参考にしながら、事案ごとにその当て嵌めの可否を考えることになります。