アフターコロナの税務調査
新型コロナウイルスの蔓延は、日本の行政の在り方にも大きな変革を迫っています。
これまでの税務調査は、国税職員の勘と経験、納税者との直接対話が基本です。
しかし、世の中が非対面へと移行したことで、このやり方は難しくなっています。
量から質への転換
2022年1月24日付日本経済新聞は、新型コロナウイルス禍の税務調査を、つぎのように伝えています。
「国税当局の税務調査が量から質を重視した運用にシフトしている。新型コロナウイルスの感染拡大で調査件数や申告漏れの総額は減少したが、調査1件あたりで指摘した申告漏れ金額は大幅に増加した」。
「例年のような調査件数を確保できない分、事前の調査などにより力を注ぎ、悪質性などが高いと見込まれる企業の調査に集中した結果とみられる」。
皮肉にも、調査活動の制約が、むしろ効率性を高めるという結果になっています。
リスクによる調査判断
国税庁は、一部の大企業に対して、会社が適正な税務申告をおこなうために内部体制を整備する取組を推進しています。
これには、会社に適正な税務申告を促すねらいと、税務調査にメリハリをつけるねらいがあります。
具体的には、会社の税務申告の体制や過去の税務調査の結果をもとに、調査の必要度の低い会社の調査は先延ばしして、その分を調査の必要度の高い会社に振り向けます。
会社の税務リスクに基づいて調査の要否を判断する手法は、税務当局には必要度の高い会社に重点的に人員投入できるというメリットがあり、かたや、内部体制を整備した会社には調査頻度を減らせるというメリットがあるので、とても効果的にはたらいています。
現在は一部の大企業にとどまる取り組みですが、中小企業にまで広がるとすると、経営者の納税意識や内部体制の整備の重要度は一層増すことになります。
調査のデジタル化
新型コロナウイルスの蔓延で、世の中のデジタル化は急速に進んでいます。
デジタルデータはアナログデータとちがい、一度に大量のデータを調べたり、その内容を確認したりすることができます。
その結果、世の中のデジタル化は、あらゆる分野の調査作業を根底から変えることになります。
近年利用が増加しているクラウド型会計システムでは、税務当局がデータ閲覧のIDを入手することで、従来とは比較できないスピードで帳簿の調査・確認が可能です。
また、調査にAIを組み込むことで、膨大なデータを網羅的・多角的に分析して、異常な取引を的確に発見できるようになります。
世の中のデジタル化が進めば進むほど、取引のデータがあらゆるところに存在するようになるため、税務調査のやり方もどんどん進化していくことになります。