優遇税制とコンプライアンス
読売新聞は、日産自動車が下請け業者の納入代金を不当に減額した下請法違反により、賃上げ促進税制の利用資格を失ったと報じました。
同税制は、令和4年度税制改正で、資本金または出資金の額が10億円以上で、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上の企業では、前年比3%以上の賃上げに加えて、給与等の支給額の引上げの方針や取引先との適切な関係の構築の方針などをインターネットで公表し、その内容を経済産業大臣に届け出た場合に限り適用できるものとされました。
その趣旨は、大企業に対して、成長と分配の好循環の実現に向けて、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点からといわれています。
読売新聞によれば、日産自動車は今年3月に公正取引委員会から下請法違反の勧告を受け、経済産業省を通じて専用サイトでのパートナーシップ構築宣言の掲載が削除されました。
この掲載は、一度削除されると1年間は再掲載がされないため、日産自動車は少なくとも1年間は賃上げ促進税制を利用できないとしています。
そして、日産自動車はこれまで同税制を利用しているため、今回の下請法違反は企業業績にも悪影響を及ぼす可能性があるとしています。
企業を取り巻く、各種ハラスメントや情報漏洩、下請法や景品表示法などの違反といったコンプライアンスの違反は、法的ペナルティを被るだけでなく、企業の社会的信用の失墜や顧客離れを招く恐れがあります。
今後、企業の経営の透明性や公正性の追求が強まる中、優遇税制の適用要件におけるコンプライアンスの求められ方は、さらに厳格化される方向にあることを覚悟しておくべきでしょう。