インフレ問題の本質
日本経済は長年のデフレから脱却して、様々なモノの値段が上がり始めました。
しかし、企業は原材料費や人件費の上昇を販売価格に転嫁することができず、社員の賃上げも思うように進んでいません。
その結果、消費者は物価高で生活が苦しく、企業はコストアップで儲からない、という歪んだ現象が起きています。
この現象の原因として、消費者や企業の意識の問題が指摘されがちです。
しかし、日本経済の生産性の低さが本質的な原因といえます。
企業が販売価格を上げるためには、顧客が納得できるだけの付加価値が必要です。
ところが、日本企業の多くは、長らく安さと品質で勝負するビジネスモデルに固執して、付加価値を増やすための取り組みや投資を後回しにしてきました。
その結果、日本企業の生産性は欧米諸国に比べて低く、販売価格を上げるだけの理由を作り出せていません。
この問題は、当然、社員の賃上げにも影響します。
企業の生産性が上がらなければ、人件費の上昇を吸収することができず、社員の賃上げを持続することはできません。
結局、現場で社員がどれだけ働いても、企業の利益が増えなければ、社員の賃上げを実現することはできないのです。
日本経済が抱える深刻な問題は、生産性が上がらないことに起因する悪循環から抜け出せないことです。
いま必要なことは、コストの上昇を販売価格に転嫁するための議論ではなく、企業が生産性を上げて商品・サービスの付加価値を増やすことです。
そのための人材や設備、AIの導入やデジタル化など、本格的な構造改革が必要です。
販売価格の上昇と賃上げの好循環は、生産性の向上による付加価値の増加が持続しない限り、実現が難しいといえます。