顧客創造
日本を代表する企業のソニーグループとトヨタ自動車が、トップ交代の人事を発表しました。
新聞報道によれば、今回の両社のトップ交代には、会社の変革を次世代に託す狙いがあるようです。
ソニーグループは、これまでも会社の事業を大きく入れ替えながら成長してきました。
現在は、グループ内にゲーム、音楽、映画、エンタテイメント・テクノロジー、イメージング、金融など、異なる事業を抱えています。
世界を相手に、まだないものを創り上げるチャレンジ精神と、人々に喜びや感動を提供するという意志のもと、将来有望ならば業種にこだわらないという経営スタイルを貫いています。
かたや、トヨタ自動車は、日本の自動車ビジネスを世界で戦える産業に発展させるべく、多くの下請企業と共に成長してきました。
しかし、近年の自動車ビジネスは、CASE やMaaSという言葉に代表される大変革期を迎えています。
CASEは、「Connected:コネクテッド」、「Autonomous:自動運転」、「Shared & Service:シェアリング・サービス」、「Electric:電動化」の頭文字で、自動車ビジネスを自動車の製造・販売にとどまらず、車という移動手段を提供するサービスに転換させるものです。
また、「MaaS (Mobility as a Service):移動に関するサービス事業」はCASEの先のサービスとして、移動利便性の向上や社会課題の解決手段として注目されています。
CASEやMaaSの世界には、グーグルやアップル、ソニーやダイソンなど、自動車メーカー以外の有力企業が続々と参入していて、新しいビジネス競争は激化しています。
トヨタ自動車のトップ交代には、会社がCASEやMaaSの世界で生き残れるように、自らを大胆に変化させていこうとする決意があらわれています。
人間と同じように企業にも寿命があるといわれます。
しかし、人間と違って企業の寿命は、経営のやり方しだいで延ばすことができます。
著名な経営学者のピーター・ドラッカーは、事業の目的は顧客の創造である(There is only one valid definition of business purpose: to create a customer.)と説いています。
世の中は常に変化していて、顧客満足を追求するだけでは、新しく生まれる顧客需要を発見することはできません。
経営者は、企業の根幹にある理念や使命を守りつつ、顧客創造のための新たな挑戦を続けていくことが肝心です。