アジャイル型組織への転換

脱炭素の進展やAIの社会的浸透が世の中のビジネスを変えようとしています。

変化の激しい時代に企業が成長し続けるには、意思決定の実行に優れるピラミッド型組織よりも、柔軟で迅速な対応が可能なアジャイル型組織が適しているといわれます。

近年、ピラミッド型組織からアジャイル型組織への転換を目指す中小企業が増えています。

とはいえ、アジャイル型組織は複雑かつ不安定で、曖昧さや不確かさを内包する組織なので、統制の効いたピラミッド型組織からの転換は容易ではありません。

アジャイル型組織は、基本的にフラットで、社員一人一人や各チームに権限が分散されています。

一方、ピラミッド型組織は、多くの階級に分かれた重層構造で、管理職に権限を集中させています。

ピラミッド型組織では、管理職と一般社員の役割が明確に区分されていて、一般社員は管理職の指示に従い、計画的に行動することが求められます。

社員一人一人に積極的な自律行動を求めるアジャイル型組織とはとても対照的です。

仕事の進め方にも、アジャイル型組織とピラミッド型組織には大きな違いがあります。

アジャイル型組織の仕事は、プロジェクト単位の進行が基本です。

プロジェクトは、チームのメンバーが上司の指示を待たずに個々が自律的に判断し、チーム内で話し合いながら最終的な意思決定をします。

ピラミッド型組織のように、最初に綿密な計画を立てた上で個々の役割を決めて行動し、上司が最終判断するのとは大きく違います。

アジャイル型組織は変化に強く、迅速で柔軟な対応に優れるといわれます。

しかし、プロジェクトには常に処理すべき複雑な問題が発生していて、プロジェクト全体をコントロールするのが難しい点は忘れてはいけません。

プロジェクトのマネージャーには、メンバーを信頼して仕事を任せながらも、適切なタイミングで軌道修正できるマネジメント力が必要ですし、参加するメンバーには、自分に与えられた役割を十分こなすだけのスキルや能力が必要です。

ですから、社員が自分の意見をあまり言わず、上司の指示を待つような組織を、一気にアジャイル型組織に転換させることは難しいでしょう。

まずは、時間をかけて、段階を踏みながら、企業風土や組織風土を変えていくことが肝心です。

たとえば、社員が自由に自分の意見を発言したり、積極的に上司と議論ができるような雰囲気づくりから始めるのが良いでしょう。

社員には、経験とスキルを見ながら、仕事をどんどん任せて、失敗よりも挑戦しないことを問題にする文化に変えていくことも重要です。

管理職には、社員を信頼して任せるところは任せた上で、困った時のサポートに徹するように、その役割を変えることも必要です。

アジャイル型組織への転換を目指す経営者の仕事は、いかにして、作り上げたピラミッド組織を上手に壊していくか、勇気をもって実行することになるのでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

前の記事

2割特例の活用

次の記事

上場企業と株価